25年前、カワウチケンチクが建てた家を建て替え、三世代の家をつくることになった。「毎日、家族みんなでご飯を食べる」と聞き、ダイニングには大きなテーブルを置いてキッチンは一つに。仕切りのないひとつながりの空間が、三世代の家族と暮らしを大らかに結んでいる。
どこにいても一年中、快適
屋根、壁、床下にも断熱材を施した住まいは、どこにいても心地いい。風の通り道も計算されていて、窓を開ければ、風が抜ける
三世代のバリアフリーな家
三世代7人の家を建てたH一家。
空間も家族の間にも仕切りのない、バリアフリーの住まいだ。
娘さん家族がご両親と同居することになり、新たに三世代の家を建てることにしたH家。「家族みんなが集まれる住まい」をテーマに進んだ家づくりを、若夫婦と河内さんに語ってもらった。
河内 太一(カワウチケンチク・以下河) はじめは、リノベーションという話もあったと聞きました。
Hさん・妻(施主・以下妻) 私たち家族が両親と同居することになって、まず手狭だったんです。増築?とも言っていたんですが、広いキッチンが欲しいとか、冬寒くて夏暑い環境を何とかしたいとか思ったら、立て替えがいいだろうと。河内くんとは幼なじみで、父は「頼むなら河内さんしかいない」と。河内君のお父さんに実家を建ててもらっていて、とにかく信頼が厚かった。
Hさん・夫(施主・以下夫) ただお願いする前に、ちょっとほかも見てみようと大手ハウスメーカーのモデルハウスなども見学したんです。
妻 でも、何か違う。私たちの中には、どんな家にしたいかという絵が明確にあったので、それを伝えて、河内君にゼロから形にしてもらった方がいい、となったんです。
河 「家族みんなが集まれる家」がテーマでした
妻 母とキッチンに立って調理したいし、ご飯はみんなで食べたいと思ったんです。
河 自然とキッチンもダイニングも広くなりました。
夫 あと、風通しのいい家にしたい、ということも伝えました。河内さんのところが、性能を重視して家づくりをしていると聞いていたので、「エアコン一台で暮らせないか?」とお願いして。
河 風がよく抜ける場所なので、それを生かして設計しました。「仕切りもあまりいらない」とのことで、大きなひとつながりの空間にして。
妻 せっかく風が通るんだから、部屋を小さく区切ってしまっては、もったいないと思ったんです。
夫 古い家は、無駄に廊下が長くて寒いという印象もあったので、廊下はいらないということも話したり。
河 単世帯の家を2つ、別々につくるのは簡単。でも、仲のいいH邸では、いかにつなげるかを考えました。玄関は2つ設けましたが、中に入ると大きくつながっていたり、すぐに集まれるように廊下も短くしたり。
妻 ほんと、行ったり来たりがスムーズで、すぐそばに家族がいる、という暮らしになりました。
段差なくフラットにつながる空間、ヒートショックのない性能
河 インテリアについては、Hさんの希望でシャビ―調に。
妻 「フレンチカントリー」という本が好きで、家を建てるなら、このテイストでまとめたいと思っていました。
河 白を基調に、ペパーミントグリーンを挿し色に、ということでしたね。
妻 調べたら、ベースの色とサブ的な色、挿し色を7:2、5:0.5にするのがいいとあったので、その比率になるように考えました。
河 カーテンやペンダントシェード、椅子のカバーなどに挿し色が使われていて。
妻 バランスよく仕上がって、すごく満足しています。
河 住み心地についてはどうですか?
妻 夏も冬も、LDKにあるエアコン一台で本当に快適です。「さすがに冬はファンヒーターがいるよね」と用意しましたが、結局使わない。
河 ご両親のことも考えると、バリアフリーはもちろん、ヒートショック対策も必須。壁だけではなく屋根裏や床下にも断熱材を配して、お風呂には基礎断熱を施しました。
妻 確かに、お風呂も入り口の戸を開けておけば温度差がなくなりますし、冬は暖気が自然と上にのぼるので、2階にある寝室も、寝る頃にはあったかくなっている。
河 躰体の性能を高めることで、ひとつながりの空間でも、隅々まで同じ快適さで満たすことができます。
夫 寝る時は、窓を開けておくと風が通って、夏でもエアコンいらず。ほんと、この快適さは、住んでみないとわからないですね。
妻 リビングとデッキの間の畳の部屋も大正解。ここが実家なので、姉や妹もよく遊びに来るんですが、帰って来ると必ず、リビング横の和室でゴロゴロ。「気持ちいいね」「やっぱ畳だよね」と大好評です。
夫 デッキには父が梁にブランコを吊るしてくれて、屋根があるので、子どもたちは雨の日でも遊んでます。
妻 あと、建ててからも、掃除機の置き場所をつけてもらったりとか、細かいことをいろいろお願いして、対応してもらっています。建てて終わりじゃなくて、ずっとお世話になれるのがありがたい。
河 定期点検は義務付けられていますが、そういう時に限って、不具合とか小さな要望とか、思いつかないんですよね。私は、呼ばれたら行くという感じです。
妻 以前、建ててもらった家もそうだったんです。そういうこともあって、父は河内さんしかないと。今になって、やっぱり間違いなかったと思っています。